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彦根について③

 

それから私は京都へ出た。大学に入った18才のことである。

今では彦根の街が好きだと言うほかないが、その当時は彦根の街が息苦しくて、街から早く抜け出したいと思っていた。

私は昔から気弱な性格だった。腕っぷしも強くなかった。小学校や中学校ではいじめられていたわけではなかった(と思いたい)が、いつも身分の低い人間として扱われていた。テレビゲームで遊んでいても自分には順番が回ってこなかった。鬼ごっこのような遊びではズルをされて、ずっと鬼の役をさせられ続けた。意味もなくよく死ねと言われた。不良少年からは暴力を振るわれることもあった。強くなろうとしたが、そうすると調子に乗るなと言われ、また死ねと言われた。結局事態を変えることはできず、私は中学を卒業するまで汚い言葉を浴びせられつづけた。都合の良いように使われつづけた。実際にあったことではないが、当時のことを思い出すと、友達全員のランドセルを持って歩いている少年の私の姿が目に浮かぶ。

両親との関係もよくなくて、彦根の街はとても息苦しかった。実家から、友達から、過去から、記憶から解放されたくて、自由になりたくて、全てを消し去って新しい自分を一からはじめたくて、彦根から抜け出したかった。もっと正確に言えば逃げたかった。実家にも友達にも私は笑って手を振り出て行ったが、心のなかでは誰がもうこんなところに帰ってくるものかと呟いていたように思う。

京都へ出て、新しい人生をここからはじめるのだと心に誓っていた。